BABYMETAL 海外 マウンテンビュー ライブレポート

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1.

サンディエゴのチュラビスタ、ロサンゼルスのイングルウッド、
そしてサンフランシスコのマウンテンビューと続く、酷暑の中の3日連続のライブ。
僕は午前中にロサンゼルス空港へ到着し、午後の便でサンフランシスコへ飛び立った。
まだまだ観足りないといった大いなる渇求と、ああ、これが最後かという、
少しばかりの寂寥とを、交る交る、しみじみ味わいながら。

 

これから僕が訪れる場所――マウンテンビュー。
実はBABYMETALとは浅からぬ関係がある。
それは こちら の映像でわかるとおり。
今回のライブ会場があるマウンテンビューには、あの Google が本社を構えているのである。

 

地理のことはさておき、「シリコンバレー」という名を知っている人は多数いることだろう。
Google の他にも、アップル、インテル、Facebook、Yahoo、アドビシステムズ……etc。
ソフトウェアやインターネット関連企業が多数生まれ、IT企業の一大拠点となっている地。
サンフランシスコ・ベイエリアの南部、サンタクララバレーおよびその周辺地域の名称。
具体的には、北はサン・マテオから南はサンノゼまでの複数の都市を指す。

 

※赤い線で囲っている地域がシリコンバレー

 

そしてマウンテンビューは、このシリコンバレーのほぼ真ん中に位置している。
また、今夜のライブ会場である Shoreline Amphitheater は、
昨年、Googleが、「Google I/O 2016」を開催した場所でもあった。
収容人数は22,500人。
その巨大な屋外の円形劇場で、今日はどんなパフォーマンスを披露するのか。
ここ数日のライブを思い返し、とりとめのない思量に耽っていると、
僕を乗せたUA447便はあっという間にサンフランシスコ空港に到着したのだった。

 

 

 

 

2.

 

Baggage Claim で荷物を受け取ると、僕は颯爽とターミナルを出ていく。
時刻は午後2時半。
見上げると、強い日差しが容赦なく降り注いでくる。
逆光の所以か、辺りは金粉が舞っているかのようにキラキラしている。

 

Uber で移動し、会場最寄りのモーテルでチェックインを終えたときだった。
偶然にもロビーで、レンタカーで移動していた他の遠征組の方々と遭遇した。
互いにまったく知らないわけではないので、挨拶や短い会話を交わしていると、
有り難いことに申し出を頂戴し、その後、会場まで同乗させていただくことになった。
その節は大変お世話になりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

 

 

 

少し部屋で休んだのち、会場まで運んでもらう。
駐車場から窺える、空に溶け込んだ遥か彼方の山稜は、おおかたバークレー・ヒルズであろう。
傾きかけた日にボサボサの長髪を曝しながら、僕はのそりのそり歩いて行く。
砂利を蹴る音が、そこら中から聞こえ、大自然の静けさを破っている。
ゲートをくぐり、いざ敷地内入ると、たちどころに気分は高揚した。
寂寥は鳴りを潜め、今だけは十分に愉しんで来いと意識外から耳打ちしてくる。

 

 

 

今回の遠征の中では今日が唯一のスタンド観戦だった。
やがて Yelawolf のライブが始まり、爆音が鳴り響いた。今日も音圧がヤバい。
彼らのライブが終了すると、次はいよいよBABYMETALの出番――。
僕は周囲をぐるりと見渡す。客入りはまずまず。
刹那、これで見納めかという焦燥が沸き起こり、一分ごとにそれの強さが増してきた。
そうして心中で、焦燥と凝望とが、やがて鬩ぎ合いを始める。
僕はカッと括目し、唇を軽く噛む。
観客の様子までしっかりと記憶に留めようと、悲喜交々至る。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01 BABYMETAL DEATH
02 ヤバッ!
03 Catch me if you can
04 メギツネ
05 KARATE
06 ギミチョコ!!

 

やがて定刻となり、定番の「BABYMETAL DEATH」でライブが始まった
3人が登場してくると観客が次第に立ち上がっていったので僕もそれに倣った。
あちこちから歓声が上がっているので周囲を窺った。
下のスタンドはほぼ満員だが、2階席はまだまだ空きがあった。

 

 

 

この位置からだとさすがに演者の表情までは分からない。
だからモニターがあれば、なお良いのになと思う。
サウンドで引き込まれている人たちは、モニターを見ることでさらに引き込まれていくからだ。
続く「ヤバッ!」のダンスを眺めながら、僕は眉の上に細やかな遺憾の意を示す。

 

ここまでの観客たちの反応は上々だった。
対照的な2曲が終わり、歓声や拍手の音は大きくなってきている。
そしてその直後、歓声の一部が、感心、感銘へと変わっていくのだが、
そういった印象を観客たちに引き起こせさせたのは言うまでもなく神バンド。
彼らのソリッドでタイトな演奏が、徐々に観客たちを乗せていったのだった。

 

 

 

「Catch me if you can」を踊る3人は本当にいつも楽しそうだ。
そして彼女たちのプラスの感情は、具に観ている観客たちへ必ず伝播していく。
視界の至る所で、楽しげに頭や体を揺らしている人たちが目に付く。
曲が終わると、前2曲のときよりも大きな歓声があちこちで沸き起こった。

 

続く曲は「メギツネ」
爆音が場内を揺らす。
僕は嬉々としてヘドバンを続ける。
観客たちのほとんどはステージを凝視している。

 

 

 

相変わらず3人の表情は遠くてわからないが、ダンスがキレているのはよくわかる。
ちょうど正面で観ているから、シンクロ具合も確認できる。
それにしても、と同曲の終盤、心地良いビートに頭を揺らしながら思う。
すり鉢状の円形劇場のせいか、SU-METALの声がいつもよりも響いているように感じる。

 

それを顕著に感じたのは次の「KARATE」だった。
SU-METALの歌声がとても心地良く大空に響き渡っている。
そして彼女の張りのある澄んだ声は間奏のMCでも存分に力を発揮した。
彼女が声を発するごとに歓声が次第に大きくなっていくと自然と涙が込み上げてきた。

 

異国のアウェイの地で、厳しい環境の中で、
がっちり場を支配していることがただただ嬉しかった。
初見の大勢の観客を一気に引き込む。
実力無くしてそうはならない。
完全無欠なライブショー。
BABYMETALの神髄は、まさにライブの中にあり。
彼女たちのステージングは息を呑むほど美しかりけり。

 

僕は何度も鼻をすすりながらその後のコール&レスポンスに参加した。
“ You’re amazing!” 終盤、SU-METALが叫ぶ。
君こそ amazing! なんだよと言い返しそうになる。
否、実際に呟きながら、最後のロングトーンに僕は酔いしれた。
残響効果を生み過ぎてはいるが、そのリバーブを差し引いても、
無二無三のSU-METALのハイトーンは茫々たる敷地内に限りなく響き渡っている。
アウトロ終了後の大歓声には、思わず感動で胸が打ち震えたのだった。

 

 

 

「KARATE」で沸点を迎えたのは今回も同じだった。
そうして観客たちが発する熱量は「ギミチョコ」が終わるまで続いていった。
多くの人が体を揺らしてリズムを体感しているが、
ざっと見渡したところ、就中女性がやはり中心を担っているようだ。

 

曲が終了すると恒例の We are BABYMETAL コールで締める。
彼女たちが “ SEE YOU ” と言って去っていってもまだ拍手は続いている。
神バンドがお立ち台に上がって挨拶をすると歓声が再び盛り返した。
そうして大盛況のもと、BABYMETALのライブは終了したのだった。
多くの観客がどれほど彼女たちのライブに引き込まれていったのか、
こうやって後方から俯瞰で観たからこそ、しっかりと状況は確認することができた。
願わくば少しでも多くの人がこのままファンベースに加わってくれればいいのだけれど。

 

 

 

その後は STONE SOUR と KORN のライブを、それこそ見納めなので心ゆくまで堪能した。
ふと涙を流してしまったのは、KORNのライブの途中でのことだった。
きっとこの素晴らしい、自然と人文が交じり合った景観のせいだろう。
星空が輝く、この円形劇場での音楽フェスは、僕の感情を大きく揺り動かしている。
そして最後の「Freak on a Leash」で紙吹雪が舞い、KORNのライブは終了した。
即ち、これにて僕の5度目の海外遠征は完遂に至った。
夜空にひらひらと舞う紙吹雪が、一味の慰安を僕の心に伝えてくるように感じられた。

 

 

 

 

4.

祭りの後のような静けさが周囲を覆っている。
僕は独り、会場から少し離れた暗い場所で帰りの Uber を待つ。
車中、早速今夜のライブを振り返る。
全天球映像のようなシーンが続けてフラッシュバックしてくる。

 

おそらくサーチすれば、日本国内にある円形劇場は幾つか見つかるのだと思う。
しかし屋外に限れば、全面芝生席以外の劇場はほとんどないのではないだろうか。
けれどアメリカには、収容人数が2万人前後の円形劇場が全国各地に多数存在している。
だからこの円形劇場でライブを行うことで何が見え、何を感じ取ることができたのかは、
今回のKORNのUSツアーに帯同していなければ分からないことだった。
先のレッチリ、ガンズ、メタリカは、すべてフラットなアリーナの会場であったのだから。

 

きっとBABYMETALと神バンドの面々は、美しい景観に、おもいきり酔いしれたに違いない。
目線を段階的に少しずつ上げていけば、そこには、必ずこちらを注視している顔がある。
あのすり鉢状の円形劇場でライブをやることはバンド冥利に尽きるのではないだろうか。
なぜならばほとんど平等に、観客たちに自分たちのステージを観てもらえるのだから。
また、ステージからどこに視線を向けても、熱狂する観客の姿は目に留まったことだろう。
観客たちから発せられる熱量は、蜷局を巻いたように常に場内に充満していたのだから。
もしかしたら頭上から声が降ってくる、武道館のときのような感覚を覚えていたかもしれない。

 

ふとツアー全体を通して思い返してみる。
16日の単独ライブから始まり、その後は4つのKORNツアーを観て回った。
他の出演バンドと違い、彼女たちのライブショーはミュージカルテイストに富んでいる。
あの円形劇場は、BABYMETALのために用意された会場と言っても過言ではないくらい、
歌とダンスと演奏で観客たちを魅了するBABYMETALのライブショーに最適だった。
国内でとは言わない、できればまた海外のあのような円形劇場で、
BABYMETALのライブを俯瞰して観たいと、ライブを観終えたばかりなのに僕は強く希望する。

 

サウンド面について少し考えてみる。
SU-METALの声量はどこの会場でも圧倒していた。
それについては、今さら驚くべきことではないけども、
YUIMETALとMOAMETALの声も随分と出ているように感じられたのは収穫だった。
これは劇場の形状(すり鉢)による少しの恩恵と、音響クルーたちの仕事のデキによるものだ。

 

ホテルに戻ってもしばらく興奮は冷めることはなかった。
こんな夜更けに、中庭のプールで泳いでいる男女のグループがいる。
彼らと同じようにはしゃいだ声を上げたいが、明日の帰国のことを考えると、
それは僕の心に雑多の陰影を与えることしかしなかった。
首の痛みが陰鬱な気分にさせつつあるのも、それに輪をかけたのかもしれなかった。

 

僕はベッドに横になり、心身に食い込んでくる苦しみを和らげるために、
今宵の楽しい記憶を思い起こそうとした。
けれど、まだまだ観足りないといった大いなる渇求は首を折り、
何とも言えない寂寥だけが心を支配するだけであった。
きっと一番楽しい遠征だったから、これほどまでの寂寞を心に抱くのだろう。
僕はそっと目を瞑り、星空の下の音楽フェスを想起する。
SU-METALの歌声が、光の矢となって、夜空をどこまでも切り裂いている。
彼女の澄んだ歌声は、僕の人生をずっと明るく照らして続けている。

 

 

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